インプラント治療の安全に対する考え方

四国各地からお越し下さる患者様がどうして吉本歯科医院をお選び下さったのか?それは治療後の快適な生活を求めという理由もありますが、インプラント治療に対する医療安全への取り組みに賛同いただいたからという患者様の声が多くあります。

吉本歯科医院では、かなり高齢になってもインプラントなどの外科的侵襲を伴う治療を希望する患者さんが少なくありません。全身のリスクについて十分把握するのは医療安全上、あらゆる年齢層で必須ですが、患者さんの平均年齢が高い場合、さまざまなリスクが隠れていると考えなければなりません。

歯科麻酔科医師の存在

そのため、術前の問診・説明から術中・術後の管理まで、歯科麻酔科医が携わっています。また、インプラントを希望する患者さんには、近くの病院で血液検査、心電図、骨密度の検査を受けてもらうことにしています。これらのスクリーニングで、手術が安全にできるかどうかだけでなく、予後についても予測できるためです。術中の循環動態のモニタリングに歯科麻酔科医が大きな力を発揮するのは当然ですが、術前のリスクスクリーニングでの役割も大きいと考えられます。

歯科麻酔科医は、当院に協力してくれている県外の大学病院から非常勤の先生に来ていただいているので、歯科麻酔科医の問診に進んだ時点で、当院の持ち出しコストが発生します。そのため、場合によっては「希望したインプラント手術ができないのに、費用負担が生じる」ということもあります。しかし、医療安全のためであることをきちんと伝えれば、患者さんに納得してもらえると考えています。

当院では、インプラントなどの外科処置を行うのは水曜日と決めています。万一の事態が起こった時に、病院で受け入れてもらいやすいためです。当院の周辺は、大学病院や県立病院、JA病院などの大規模病院が集中しているため、バックアップしてもらいやすいのは事実ですが、いきなり搬送しても、すぐには対応してもらえないのは当然です。手術日を平日にし、なおかつ曜日を固定することで、「今日は吉本歯科医院の手術日だな」と、病院側も心理的に受け入れやすくなる効果があります。仮に、土曜日など当直医しかいない日に手術を行って偶発症が発生した場合、患者さんを危険にさらすことになってしまうからです。また、連携先病院で感染症を含む詳細な血液検査や心電図、骨密度検査等を実施していれば、骨粗しょう症や糖尿病のようなハイリスクな全身疾患もスクリーニングしやすく、早めに善処できます。

心電図の重要性

第一には心電図。一般的な歯科医師は、外科手術の経験の有無にかかわらず、循環動態全身管理の知識が十分ではありません。病院から送られてくる検査結果に「右軸偏位」と書かれていても、その臨床的意義を理解し、手術前に何を把握しておくべきか判断できる歯科医師は少ないでしょう。インプラントは骨に対する外科手術なので、健康体でもある程度は不整脈が記録されます。しかし、生体モニターが不整脈を示した際、「患者さんにもともと既往としてあった不整脈なのか?」「もともとはなかった不整脈なのか?」「何が危ない兆候なのか?」を現場で判断できるチーム態勢にしておくことが必要なのです。 

問診

次に、事前の問診。ほとんどの歯科医院で、初診時や外科手術前に全身疾患などの問診をしているはずですが、「歯科には関係ないだろう」と勝手に判断して記入しない患者さんが、意外に少なくないのです。術中や術後に偶発症が起きた場合、「問診で申告がなかった」というだけで、医院側の善管注意義務違反が免責される時代ではなくなってきています。そのため、できるだけリスクを吸い上げて把握する体制が必要だと考えています。

緑内障とインプラント治療

代表的なのが緑内障。緊張感や精神的不安、そして恐怖心を和らげて、リラックスした状態で安全かつ円滑にインプラント手術を受けていただくために、局所麻酔と鎮静法が併用されることが増えてきています。鎮静薬のジアゼパム、ミダゾラムおよびフルニトラゼパム等は、「閉塞隅角緑内障」の病型に該当する緑内障患者に対しては禁忌であると報告されています。抗コリン作用により、眼圧を上昇させ、症状を悪化させる可能性がありますが、患者さんには「歯とは関係ない」と思われがちなのです。 この場合、「緑内障ではありませんか?」と聞くだけでなく、この病気によってどのようなリスクがあるか示すことで、正確に聞き出せたりするものです。歯科麻酔科医の問診で初めて判明し、眼科との情報共有によって手術にこぎ着けた事例もあります。

緊急事態にはプランBへ移行

当院では、生体モニター、酸素ボンベ、インプラントセットなどは全て、2個セットで用意しています。術中に一つが故障しても対応できるため、「プランB」への転換で生じる
ロスが少なくなり、患者さんの負担も軽くなります。器械モノはバックアップ機を用意しておき、予備電源も2重、3重に設置してある。「器械モノは壊れる」と最初から想定していた方が、落ち着いて対処できます。

また、「バキュームが吸引物で詰まったのでユニットを移ってもらった」という経験をした歯科医師は少なくないはずですが、手術中は難しいでしょう。そうした場合に備えて、10mのバキュームホースを準備しておき、隣のユニットと接続するバックアップ体制も整えています。実際に使用したことはありませんが、バキュームの不具合はまれではないので、安全対策として必要でしょう。 地震による停電も考慮し、東日本大震災後、停電用コンセント(1,500W)を設置。さらに、非常用予備電源バッテリーも用意しています。これでカバーできないのは、200Vの歯科用吸引器と手術用大型無影灯だけ。つまり、治療を完遂することはできなくても、カバースクリューで止めて安全な状態で帰ってもら
う対応ができるということです。応急処置に必要な時間は10分程度ですが、バックアップ電源には数時間分の余裕があります。