骨粗鬆症(こつそしょうしょう)は多くの女性にとって無関係とは言えない病気で、現在50歳以上の3人に1人は骨粗鬆症にかかっていると言われています。ただ、50歳以上くらいになると歯を失い始める人も多くなり、インプラントのように歯を補う治療が必要になる人も多くなってきます。インプラントは骨に人工の歯根を埋め込む治療法ですので、吉本歯科医院でも「骨粗鬆症でもインプラントはできますか?」と質問を受けることがあります。そこで今回は、骨粗鬆症でもインプラントは可能なのか、ということについて詳しくお話ししていきたいと思います。
骨粗鬆症ってどんな病気?
骨粗鬆症にかかりやすいのは圧倒的に女性です。患者の8割は女性だと言われています。女性はもともと骨量が男性よりも少ないのですが、それに加え、女性ホルモンが骨の新陳代謝に大きく関わっているため、閉経時に起こるエストロゲンという女性ホルモンの分泌量の低下が、骨の状態に大きな影響を与えるようになります。骨というのは常に破壊されたり新しく作られたりという新陳代謝をしていますが、そのバランスを保っているエストロゲンが減ってしまうと、骨が作られるよりも壊されるほうが多くなり、骨の密度が低下してしまうのです。こうやって骨の密度が低下して、スカスカになってしまう状態を骨粗鬆症と呼んでいます。骨の密度が低下すると、日常的なちょっとした動作でも骨折してしまいやすくなり、その骨折が将来的に寝たきりの状態を引き起こすことがあるため、十分な注意が必要です。
骨粗鬆症の人でもインプラントができるケースもあります
インプラントはチタン製の人工歯根を骨に埋め込み、両者が強固に結合する必要があります。骨粗鬆症でインプラントを埋め込む骨がスカスカだとインプラントがうまく骨に結合しづらくなるため、そういった意味でどうしても不利になってしまうということは言えるでしょう。ですが、これまでにも骨粗鬆症の人でもインプラント治療を受けて、特に問題なく経過しているケースは多くありますし、むしろインプラントをせずに刺激を受けなくなった骨はますます退化して骨粗鬆症を悪化させてしまうというような見方もあります。骨の状態を検査して、骨が足りなければ骨の再生治療や移植治療などを行うことにより、インプラントを受けられる可能性は大きく高まってきます。
骨粗鬆症の人がインプラントを受ける際に注意すること
骨粗鬆症の人がインプラント治療を受ける際、いくつか気を付けなければならない点があります。
治療期間が長くなる可能性が高い
まず、骨の密度が低いため、インプラントと骨がしっかりとくっつくまでの期間を通常よりも多く取らないといけないということ、そして、骨が十分でない場合には骨を増やす手術が別に必要になる可能性があるということが挙げられます。そのため、インプラントの手術をしてから最終的に治療が終わるまでに、通常よりも数ヶ月長くかかる可能性があります。
ビスフォスフォネート系薬剤を使用している場合には治療できないことも
そして、特に注意が必要なのが、骨粗鬆症の薬を使用している場合です。骨粗鬆症の治療薬としてビスフォスフォネート系の薬剤を使っている方は、抜歯やインプラントのような外科手術をすると、骨が壊死してしまう危険性があります。これは過去にビスフォスフォネート系の薬剤を服用していた場合も含みます。骨粗鬆症の薬は飲み薬と注射が存在しますが、飲み薬の場合、骨の壊死をおこす確率は1万人に1人くらい、注射の場合だと10人に1人という割合だとされています。もしもビスフォスフォネート系薬剤を服用している人に抜歯などの外科処置を行った場合、最大7人に1人くらいが骨壊死を起こすと言われています。特に注射の治療を受けている人はリスクが高いため、注意が必要です。また、使用期間が長い場合、そして使用量が多い場合というのはそれだけ顎骨が壊死する危険性が高くなると言われています。またさらには、タバコを吸う人、肥満の人の場合、リスクが大きく高まることがわかっています。飲み薬を使用しているがまだ使用期間が短い、使用量が少ない、という場合にはリスクとしてはそう高いとは言えないのですが、インプラント治療をあえて積極的に行うのは一旦控えたほうが無難だと言えます。
骨粗鬆症の人はまず担当医に相談してみましょう
まず、骨粗鬆症の人は必ず歯科でもその旨を問診時に伝えるようにしましょう。歯科とは関係ないと思って伝えなければ、何も知らずに外科処置を進めてしまい、骨の壊死を起こしてしまう危険性があります。また、同じ歯科にずっと通っていて、初診時には骨粗鬆症ではなく、途中から骨粗鬆症が見つかり治療を始めた場合にも、必ずその旨を歯科医師に報告しましょう。歯科の治療では、抜歯やインプラントに限らず、他にも歯茎を切るなどの外科処置を行う場合があるため、歯科医師はそのことをきちんと知っておく必要があります。また、骨粗鬆症の場合でも、薬の種類や服用期間などによってはインプラントが可能と判断されることもありますので、まずは担当医によく相談することが肝心です。