インプラントの価格

インプラント治療の価格はどのように設定されているのでしょうか?世界中で流通していて、アメリカの大学で使用が認められている、一流品と言われるインプラント本体の値段は1本あたり4万円以上します。また、インプラント本体に接続されるアバットメントという部品は、補綴物(ほてつぶつ)と呼ばれる白い人工の歯の部分をネジで固定する着脱可能なタイプのものだと1本あたり3万円以上します。ところが、韓国製のインプラントは、フィリピンなどでは1本あたり4,000円程度で販売されている場合もあるようです。また、アバットメントもネジで着脱不可能なセメント固定タイプの方式は値段が安いのです。セメントで固定するタイプの場合は、ネジで着脱できるタイプの場合の半値以下の場合もあります。つまり、材料代や技工料は使用しているインプラントのメーカーや種類や、アバットメントの種類、人工の歯の固定方法によって極端に異なるということです。人工の歯である補綴物は歯科技工士が作ります。現在はCADCAMの技術で作られることが多くなりました。これも歯科技工所によって料金が異なります。セメントで固定するタイプの補綴物はアバットメントも技工料も安いのですが、固定する為に使用するセメントが歯肉の中に入りこみインプラント周囲炎の原因となるリスクが問題視されています。では、原価が安いインプラントの質が悪いのか?というと、これについては意見は分かれます。ただ、世界的に多くの論文によって経過が報告され、インプラント先進国と言われるアメリカの大学病院や一流と言われているインプラント専門の医院で使用されているインプラントはプレミアムインプラントと呼ばれる世界で流通し、歴史のある、ストローマン社、ノーベルバイオケア社、ジンマーバイオメット社、デンツプライシロナ社などです。日本製のインプラントや韓国製のインプラントは世界的な評価は低いというのが実情です。

インプラント治療に欠かせない「患者さん側には見えない費用」

インプラント治療を行う為には欠かせない「患者さんには見えない費用」というものがあります。日本国内でもインプラント手術に伴う死亡事故が起きています。この事故はインプラントのドリルが下顎骨を貫通し血管を巻き込み、出血により気道を圧迫し窒息するというものでした。また、術前のCT撮影が一般的になる前には、骨を削るドリルが下歯槽神経を損傷し、口唇周囲に知覚麻痺が出るというトラブルも多くありました。これらのトラブルを減らす為には、インプラント治療に対する基本的な医療安全管理が重要です。インプラント治療には術前の口腔内写真とCT撮影を行う必要があります。これがなければ、正確な治療計画を立案することができないからです。

安全を担保する為にはインプラント治療に際しては静脈路を確保し点滴を行いながら行うことが必要です。血圧や脈を管理しながら手術を行うことが手術には必須ですし、静脈内鎮静を行えば患者さんは恐怖感や緊張感の無いボーッと状態で手術を行うことが可能です。インプラント手術を行う執刀医以外に、全身管理と静脈内鎮静を行う別の医師がいることが理想的です。大きなジェット機には必ず副操縦士が乗っています。複数の歯科医師が手術に立ち会うことが理想的なのです。そして、術前に設計した正確な位置にインプラントを埋める為にはコンピュータガイド手術(サージカルガイド)が有効です。目視で行う従来の手術が数ミリの誤差があるのですが、コンピュータガイド手術に習熟した先生の手術誤差は1ミリ以下になります。コンピュータガイド手術を用いると事故が減らせるだけでなく、正確な位置にインプラントを埋めることができますので、補綴物をネジ止め式で作る場合に補綴物の中央にネジ穴を設定することが可能になります。コンピュータガイド手術を用いない従来のフリーハンドの手術では、正確な位置にネジ穴を設定することは非常に困難なのです。このような訳で「術前に口腔内写真とCTを撮影しているか?」「静脈路を確保してインプラント手術を行っているか?」というのが、最低限の安全を確保したインプラント手術と言えます。理想的には「複数歯科医師によるインプラント手術」「コンピュータガイド手術」「セメント固定では無く、ネジ止めスタイルの補綴物」という項目をクリアしていることが望ましいのです。治療費においては、「静脈内鎮静」や「複数歯科医師によるインプラント手術」「コンピュータガイド手術」「セメント固定では無く、ネジ止めスタイルの補綴物」などは基本治療では無く、別料金に設定されている場合が一般的ですので、治療費の見積もりに、これらの項目が含まれているかどうかを確認することが重要です。これらのオプションを選択した場合、治療費が極端に高くなってしまう場合があるので注意しましょう。

医療安全への考え方

四国各地からお越し下さる患者様がどうして吉本歯科医院をお選び下さったのか?それは治療後の快適な生活を求めという理由もありますが、インプラント治療に対する医療安全への取り組みに賛同いただいたからという患者様の声が多くあります。吉本歯科医院では、かなり高齢になってもインプラントなどの外科的侵襲を伴う治療を希望する患者さんが少なくありません。全身のリスクについて十分把握するのは医療安全上、あらゆる年齢層で必須ですが、患者さんの平均年齢が高い場合、さまざまなリスクが隠れていると考えなければなりません。

そのため、術前の問診・説明から術中・術後の管理まで、歯科麻酔科医が携わっています。また、インプラントを希望する患者さんには、近くの病院で血液検査、心電図、骨密度の検査を受けてもらうことにしています。これらのスクリーニングで、手術が安全にできるかどうかだけでなく、予後についても予測できるためです。術中の循環動態のモニタリングに歯科麻酔科医が大きな力を発揮するのは当然ですが、術前のリスクスクリーニングでの役割も大きいと考えられます。

第一には心電図。一般的な歯科医師は、外科手術の経験の有無にかかわらず、循環動態全身管理の知識が十分ではありません。病院から送られてくる検査結果に「右軸偏位」と書かれていても、その臨床的意義を理解し、手術前に何を把握しておくべきか判断できる歯科医師は少ないでしょう。インプラントは骨に対する外科手術なので、健康体でもある程度は不整脈が記録されます。しかし、生体モニターが不整脈を示した際、「患者さんにもともと既往としてあった不整脈なのか?」「もともとはなかった不整脈なのか?」「何が危ない兆候なのか?」を現場で判断できるチーム態勢にしておくことが必要なのです。 

次に、事前の問診。ほとんどの歯科医院で、初診時や外科手術前に全身疾患などの問診をしているはずですが、「歯科には関係ないだろう」と勝手に判断して記入しない患者さんが、意外に少なくないのです。術中や術後に偶発症が起きた場合、「問診で申告がなかった」というだけで、医院側の善管注意義務違反が免責される時代ではなくなってきています。そのため、できるだけリスクを吸い上げて把握する体制が必要だと考えています。

代表的なのが緑内障。緊張感や精神的不安、そして恐怖心を和らげて、リラックスした状態で安全かつ円滑にインプラント手術を受けていただくために、局所麻酔と鎮静法が併用されることが増えてきています。鎮静薬のジアゼパム、ミダゾラムおよびフルニトラゼパム等は、「閉塞隅角緑内障」の病型に該当する緑内障患者に対しては禁忌であると報告されています。抗コリン作用により、眼圧を上昇させ、症状を悪化させる可能性がありますが、患者さんには「歯とは関係ない」と思われがちなのです。 この場合、「緑内障ではありませんか?」と聞くだけでなく、この病気によってどのようなリスクがあるか示すことで、正確に聞き出せたりするものです。歯科麻酔科医の問診で初めて判明し、眼科との情報共有によって手術にこぎ着けた事例もあります。

歯科麻酔科医は、当院に協力してくれている県外の大学病院から非常勤の先生に来ていただいているので、歯科麻酔科医の問診に進んだ時点で、当院の持ち出しコストが発生します。そのため、場合によっては「希望したインプラント手術ができないのに、費用負担が生じる」ということもあります。しかし、医療安全のためであることをきちんと伝えれば、患者さんに納得してもらえると考えています。

当院では、インプラントなどの外科処置を行うのは水曜日と決めています。万一の事態が起こった時に、病院で受け入れてもらいやすいためです。当院の周辺は、大学病院や県立病院、JA病院などの大規模病院が集中しているため、バックアップしてもらいやすいのは事実ですが、いきなり搬送しても、すぐには対応してもらえないのは当然です。手術日を平日にし、なおかつ曜日を固定することで、「今日は吉本歯科医院の手術日だな」と、病院側も心理的に受け入れやすくなる効果があります。仮に、土曜日など当直医しかいない日に手術を行って偶発症が発生した場合、患者さんを危険にさらすことになってしまうからです。また、連携先病院で感染症を含む詳細な血液検査や心電図、骨密度検査等を実施していれば、骨粗しょう症や糖尿病のようなハイリスクな全身疾患もスクリーニングしやすく、早めに善処できます。

当院では、生体モニター、酸素ボンベ、インプラントセットなどは全て、2個セットで用意しています。術中に一つが故障しても対応できるため、「プランB」への転換で生じる
ロスが少なくなり、患者さんの負担も軽くなります。器械モノはバックアップ機を用意しておき、予備電源も2重、3重に設置してある。「器械モノは壊れる」と最初から想定していた方が、落ち着いて対処できます。

また、「バキュームが吸引物で詰まったのでユニットを移ってもらった」という経験をした歯科医師は少なくないはずですが、手術中は難しいでしょう。そうした場合に備えて、10mのバキュームホースを準備しておき、隣のユニットと接続するバックアップ体制も整えています。実際に使用したことはありませんが、バキュームの不具合はまれではないので、安全対策として必要でしょう。 地震による停電も考慮し、東日本大震災後、停電用コンセント(1,500W)を設置。さらに、非常用予備電源バッテリーも用意しています。これでカバーできないのは、200Vの歯科用吸引器と手術用大型無影灯だけ。つまり、治療を完遂することはできなくても、カバースクリューで止めて安全な状態で帰ってもら
う対応ができるということです。応急処置に必要な時間は10分程度ですが、バックアップ電源には数時間分の余裕があります。

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