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    四国各地からお越し下さる患者様がどうして吉本歯科医院をお選び下さったのか?それは治療後の快適な生活を求めという理由もありますが、インプラント治療に対する医療安全への取り組みに賛同いただいたからという患者様の声が多くあります。吉本歯科医院では、かなり高齢になってもインプラントなどの外科的侵襲を伴う治療を希望する患者さんが少なくありません。全身のリスクについて十分把握するのは医療安全上、あらゆる年齢層で必須ですが、患者さんの平均年齢が高い場合、さまざまなリスクが隠れていると考えなければなりません。

    そのため、術前の問診・説明から術中・術後の管理まで、歯科麻酔科医が携わっています。また、インプラントを希望する患者さんには、近くの病院で血液検査、心電図、骨密度の検査を受けてもらうことにしています。これらのスクリーニングで、手術が安全にできるかどうかだけでなく、予後についても予測できるためです。術中の循環動態のモニタリングに歯科麻酔科医が大きな力を発揮するのは当然ですが、術前のリスクスクリーニングでの役割も大きいと考えられます。

    第一には心電図。一般的な歯科医師は、外科手術の経験の有無にかかわらず、循環動態全身管理の知識が十分ではありません。病院から送られてくる検査結果に「右軸偏位」と書かれていても、その臨床的意義を理解し、手術前に何を把握しておくべきか判断できる歯科医師は少ないでしょう。インプラントは骨に対する外科手術なので、健康体でもある程度は不整脈が記録されます。しかし、生体モニターが不整脈を示した際、「患者さんにもともと既往としてあった不整脈なのか?」「もともとはなかった不整脈なのか?」「何が危ない兆候なのか?」を現場で判断できるチーム態勢にしておくことが必要なのです。 

    次に、事前の問診。ほとんどの歯科医院で、初診時や外科手術前に全身疾患などの問診をしているはずですが、「歯科には関係ないだろう」と勝手に判断して記入しない患者さんが、意外に少なくないのです。術中や術後に偶発症が起きた場合、「問診で申告がなかった」というだけで、医院側の善管注意義務違反が免責される時代ではなくなってきています。そのため、できるだけリスクを吸い上げて把握する体制が必要だと考えています。

    代表的なのが緑内障。緊張感や精神的不安、そして恐怖心を和らげて、リラックスした状態で安全かつ円滑にインプラント手術を受けていただくために、局所麻酔と鎮静法が併用されることが増えてきています。鎮静薬のジアゼパム、ミダゾラムおよびフルニトラゼパム等は、「閉塞隅角緑内障」の病型に該当する緑内障患者に対しては禁忌であると報告されています。抗コリン作用により、眼圧を上昇させ、症状を悪化させる可能性がありますが、患者さんには「歯とは関係ない」と思われがちなのです。 この場合、「緑内障ではありませんか?」と聞くだけでなく、この病気によってどのようなリスクがあるか示すことで、正確に聞き出せたりするものです。歯科麻酔科医の問診で初めて判明し、眼科との情報共有によって手術にこぎ着けた事例もあります。

    歯科麻酔科医は、当院に協力してくれている県外の大学病院から非常勤の先生に来ていただいているので、歯科麻酔科医の問診に進んだ時点で、当院の持ち出しコストが発生します。そのため、場合によっては「希望したインプラント手術ができないのに、費用負担が生じる」ということもあります。しかし、医療安全のためであることをきちんと伝えれば、患者さんに納得してもらえると考えています。

    ジェット旅客機にはかならず操縦士と副操縦士が飛行機を運行します。病院で行われる手術は、基本的には執刀医と全身管理と麻酔を行う麻酔医で行うことが一般的です。手術の安全は全身管理を行う麻酔医が生体情報モニタを睨みながら、血圧や心拍などを絶妙にコントロールしている訳です。その麻酔医がいるので執刀医は手術に専念できます。一つの手術で麻酔医を確保すると当然余分な人件費がかかります。しかし、歯科麻酔科医師が入れば、静脈内鎮静法で患者さんは緊張や恐怖感を無くした状態で手術することが可能となるのです。

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