歯科コラム

「なくて七癖、あって四十八癖」ということわざがあるように、誰でも癖は持っているものです。癖がなさそうな人でも7つの癖、癖が多く目につく人では48の癖がある、という意味ですが、癖というのはそもそも無意識にやってしまうものなので、自分で気づいていない癖というのは誰でも持っていると考えられます。癖の中には、お口周辺に関するものも多くあります。例えば唇を噛んだり、舌で歯を押してみたり、爪を噛んだり・・というようなものですが、その多くはお口やその周囲に対し、悪い影響を及ぼします。今回はその中でも、歯やインプラントにとって悪影響を及ぼす癖、「TCH」についてご紹介していきます。

TCHとは

TCHとは

TCHという言葉、ほとんどの人は聞いたことがない言葉なのではないでしょうか?これは、「Tooth Contacting Habit」の頭文字を取ったもので、「上下の歯を接触させる癖」のことを言います。上下の歯というものは接触させるものだと思っている人もいるかもしれませんが、実は、上下の歯は食べるとき、しゃべるとき以外には接触していないのが正常な状態で、1日に接触しているべき時間はわずか17分ほどだと言われています。

食事や会話以外の時にも上下の歯が接触していると、歯に異常な力がかかってしまったり、噛む筋肉が疲労・緊張した状態になり、顎の関節にも負担がかかって、眠っている間に歯ぎしりや食いしばりを引き起こす要因にもなります。つまり、歯を無駄に接触させる癖があると、歯をはじめとして、口周辺の顎の筋肉や関節、そして、全身にまでなんらかの症状を起こすことがあるのです。

TCHはどんな時に起こる?

TCHはどのような時に起こるのでしょうか。上下の歯を合わせてしまうTCHは、基本的に、緊張しているときや、集中している時に起こります。例えば、精神的なストレスを感じている時、重いものを持ち上げるなどのような、力を必要とする時、そして、テレビゲームやパソコン、携帯電話の画面に夢中になっている時、家事をしている時などに非常に起こりやすくなると言われています。これらのように、日常的なふとした動作の際にTCHを行なっている人が非常に多いと言われ、ほとんどの場合、行なっている本人には自覚がありません。また、一度癖になってしまうと様々な場面で容易にTCHを行なってしまうようになり、眠っている間にまで歯ぎしりや食いしばりを起こしやすくなると言われています。

TCHによって起こる悪影響

TCHによって起こる悪影響

TCHが起こると、たとえそれが上下の歯をほんのちょっと軽く接触させるだけのものであっても、歯にとっては結構な負担となります。上下の歯が触れ合うことで、歯の歯根の周りにある歯根膜を圧迫して、血流が阻害されます。また、顎の関節や筋肉にも負担がかかります。それらの結果、次のような悪影響が起こってきます。

・歯の知覚過敏(冷たいもの、熱いものがしみる)
・噛み合わせた時の歯の違和感や痛み
・詰め物、差し歯の脱落
・歯の異常なすり減り(咬耗)
・歯周病の悪化
・歯の破折
・顎関節や顎の筋肉の痛み
・口を開け閉めする際の顎関節の雑音
・口が開けづらい
・肩こり、首の痛み
・頭痛
・慢性疲労

謎の歯の不調、顎の痛みや体の不調などの原因がTCHから来ている、ということも決して珍しくありません。

TCHはインプラントにも悪い影響を与える

TCHは歯にとって大きなダメージを起こしうるものですが、これはインプラントにおいても同じことが言えます。TCHによってインプラントに異常な力が加わり続けると、インプラント周囲には天然歯に存在するような歯根膜がないため、その力は埋まっている骨に直に加わることになります。そうすると、周囲の骨を吸収させる方向に行ってしまい、インプラントが抜け落ちてしまうことにもつながりかねないのです。天然歯の場合には歯根周囲に歯根膜が存在しているので、歯に異常な力がかかってもある程度はそれを緩衝してくれますが、インプラントの場合にはその歯根膜がないので、天然の歯に比べてより深刻な状況になりやすい、ということが言えるでしょう。

TCHへの対策

TCHをなくしていくためには、まずTCHを自覚しなければなりません。ですがほとんどの人はそのことに気がついていないのが実際のところです。もしも原因不明の歯の痛みや顎の不調、痛みなどがある場合、TCHがないかを疑ってみましょう。そして、食事や会話以外の時に上下の歯が触れているのを自覚したら、すぐさま離すということを心がけましょう。それを繰り返していくだけでも、TCHが治る可能性があります。

もし、どうしても忘れてしまう、というような場合には「歯を合わせない」などと書いた付箋紙を家のあちこちに貼り付けておく、リマインダー法も効果的です。TCHをしなくなることで、さらに歯や顎に大きなダメージを与えうる、夜間の歯ぎしりや食いしばりの改善も望めます。ぜひ、日常生活の中で「不必要に歯を合わせていないか」ということを意識してみるようにしてみてください。たったそれだけでも、お口の健康、体の健康の改善が期待できます。

■ 歯科コラム バックナンバー一覧

吉岡歯科医院オフィシャルサイト

吉岡院長の治療説明や最新歯科治療について紹介しています!