患者様のあいだでインプラント治療に対する意識が高まりつつある昨今ですが、インプラントの種類やメーカーについては実はあまり知られていなません。インプラント治療を行っている医院によってはインプラントのメーカーや種類を限定しているところもありますが、複数のインプラントを扱っているところもあります。今回は、インプラントの種類やメーカーにおける特徴についてご紹介したいと思います。これからインプラント治療を考えている方は、ぜひご参考にしてみて下さい。
海外メーカーのインプラント
まず海外のインプラントメーカーについてご紹介します。現在の海外メーカーのインプラントは非常に種類が豊富です。そのなかでも世界中で人気が高く、長い臨床実績や高い安全性などが保証されている限られたメーカーについてご紹介したいと思います。
アストラ(アストラテック)インプンラント
「アストラ(アストラテック)インプンラント」は歯科インプラント発祥の地であるスウェーデンにあるアストラテック社から販売されているインプラントです。治療が難しい場合でも適応しやすい2ピースタイプのインプラントであり、そのほかにもインプラント治療を扱う歯科医師たちにとっては喜ばしいたくさんの特長を持っています。まずひとつは、インプラント体の表面に特殊な加工を施しているため、インプラントが歯の骨に定着するまでの期間を早めることが可能となっています。次に、インプラントを入れてから数年経過すると起こりやすいと言われる骨吸収(歯の骨が失われていく現象)が発生しにくいインプラントとして高く評価されています。また、インプラントのトラブルにありがちである上部構造(人工歯)とインプラント体の接合部のゆるみも起こりにくいため、歯科医師だけでなく患者様の負担も減ります。これらの特長により、海外だけでなく日本でも多くのところで人気となっている海外メーカーインプラントのひとつです。
ストローマン・インプラント
「ストローマン・インプラント」はスイスにある「ストローマン社」から販売されているインプラントであり、以前までは「ITIインプラント」と呼ばれていました。適応症例はある程度限られてしまうものの、扱い方がシンプルである1ピースタイプのインプラントであり、またあらゆるメーカーと比べ非常に優れた特長を持っています。それが「SLAサーフェイス」という独自のインプラント体の加工技術です。現在のインプラントはどのメーカーも歯の骨と定着しやすく長く安定するよう表面加工を施しています。しかし、どのメーカーと比較しても「ストローマン社」の「SLAサーフェイス」による表面加工は群を抜いており、これ以上の加工はないのではないかと言われているほどです。シンプルな構造で抜群の安定性を誇ることから、「ストローマン・インプラント」も多くの歯科医師のあいだで人気となっているインプラントです。
ジンマー(Zimmer)
「ジンマー(Zimmer)」のインプラントはアメリカにある「ジンマー・バイオメット社」から販売されているインプラントです。適応症例の広い2ピースタイプが基本であり、そのほかにも幅広いタイプのインプラントを扱っています。そのインプラントの特長は、海外メーカーではあまり行われていない「HA(ハイドロキシアパタイト)コーティング」を施していることです。(「HA(ハイドロキシアパタイト)」とは骨に多く含まれている無機質の名称のこと)さらに独自の酸処理加工を施していることにより、インプラントを入れてから最初の課題である初期固定が成功しやすく、インプラント周囲炎にもなりにくくなっています。インプラントの異常に多いインプラント周囲炎のリスクが低くなることは非常に魅力的なポイントであり、多くの歯科医師から指示されています。
ブローネマルク(ノーベル・バイオケア)
「ブローネマルク」は「ノーベル・バイオケア社」により世界で最初に実用化されたインプラントとして最も有名です。商品名には、実際にインプラントの素材にチタンを使用することで歯の骨との結合力が高くなることを発見した「ブローネマルク」という歯科医師の名が使用されています。どのメーカーと比較しても長い歴史と臨床実績を誇る信頼性の高いインプラントであり、その種類も非常に豊富です。治療が難しい症例に適した高度なインプラントであるものの、そのために扱う歯科医師にも高い技術も求められるため、万能向けではない上級者用ともなっています。しかし裏を返せば、このメーカーのインプラントを扱える医師は多くの臨床経験と高い知識を持っていることが証明されることにもなります。一度は治療を断られてしまった患者様も、再度このメーカーのインプラントを扱っている歯科医院を探されてみると良いかもしれません。
日本メーカーのインプラント
人気の高い海外メーカーのインプラントをご紹介させていただきましたが、ここで日本で作られている国産のインプラントについてもご紹介します。インプラント製品はそのほとんどが海外メーカーによるものであり、日本メーカーによるインプラントの種類は決して多くはありません。
代表的なメーカーとしては、
・「京セラデンタルネット」による「POIインプラント」
・「アドバンス社」による「AQBインプラント」
・「GC(ジーシー)」による「GCインプラント」
・「プラトン社」による「プラトン・インプラント」
などがあります。
どのメーカーも高い信頼性のある企業であり、歴史の長い海外メーカーと比べても遜色ない実績を持っています。また、ほとんどのメーカーが海外ではあまり見かけない「HAコーティング」を採用しており、インプラント周囲炎に対応したインプラントを扱っています。さらに日本人向けに開発されたインプラントを扱っているのも国内メーカーだけです。もし海外製品にはどうしても抵抗を覚えてしまうという方や、日本人に合ったものが良いと思われる方は、こちらのインプラントも考えてみてはいかがでしょう。
もしもの場合に必要なインプラントの知識
自分自身がどのメーカーのインプラントを使っているのかを把握しておくことは意外に重要なことです。たとえば、別の歯科医院へ転院を余儀なくされた場合でも、同じメーカーのインプラントを扱っている医院を探すことでメンテナンスを継続することができます。またメジャーなインプラントを把握しておくことで、安全性や実績などがあまりわからないマイナーなメーカーを間接的に避けることにもつながります。インプラントについて知ることは、安全にインプラント治療を受けられることと考えてみて下さい。そうすれば、みなさまの関心も高まっていくことでしょう。